サプライチェーン(製品やサービスの供給網)のセキュリティを強化するために導入されたSCS評価制度において、経営者が直面するのが「★3と★4のどちらを目指すべきか」という判断です。結論から言えば、まずは取引先からの具体的な要請を確認し、自社が顧客のシステムやデータにどの程度の影響を与える立場にあるかを整理することから始めてください。

無理に高い星を目指すのではなく、求められる役割に見合った水準を正しく選ぶことが、コストとリスクのバランスを取る鍵となります。

★3と★4で求められるセキュリティ水準はどう違うのか

確認する3つの視点:一般的な脅威への対処を目指す★3の水準、被害拡大防止と役割への適合を求める★4の水準、段階的な取得関係と将来的な★5の展望
図1:★3と★4で求められるセキュリティ水準はどう違うのか

一般的な脅威への対処を目指す★3の水準

★3は、一般的なサイバー攻撃などの脅威に対して、最低限必要な対策が講じられていることを目指す段階です。具体的には、あらかじめ定められた要求事項に基づき、自社でセキュリティ対策の状況をチェックし、その結果を報告する形をとります。これは、会社として「基本的な守りはできています」という姿勢を示すための指標といえます。

例えば、日常的なウイルス対策やパスワード管理、基本的なネットワークのルール作りなどが含まれます。自社だけで判断するのが難しい場合は、外部のセキュリティ専門家に相談しながら進めることも可能です。まずは自社の現状を正しく把握し、要求事項に基づいた対策が講じられているかを確認することが、★3取得のプロセスとなります。

被害拡大防止と役割への適合を求める★4の水準

★4は、★3よりも一段高いレベルの対策が求められます。単に侵入を防ぐだけでなく、もし侵入されてしまった場合に、そこから被害を広げないための仕組みや、取引先の重要なデータやシステムを守るための具体的な取り組みが評価の対象となります。自社がサプライチェーンの中でどのような役割を担っているか、その役割に応じた強靭な対策ができているかが問われます。

例えば、重要な設計データや顧客情報を預かる業務を行っている場合、★4に求められる「被害拡大防止」の観点が非常に重要になります。自社のセキュリティ対策が、取引先のデータやシステム保護に寄与する役割を担っている場合、★4の水準を検討する必要があるでしょう。これは、自社の守りを固めることが、そのまま取引先の安心につながるという考え方に基づいています。

段階的な取得関係と将来的な★5の展望

制度の仕組みとして、上位の星を取得するためには、必ずしも事前に下の星を取得していなければならないというルールはありません。例えば、最初から★4を目指して準備を進めることも可能です。ただし、★4やその先の★5を目指す場合は、★3で求められるような基本的な対策が土台として前提となります。

なお、将来的な展望として、より高度なサイバー攻撃に対応するための「★5」についても検討が進められています。★5では、自社のリスクを適切に管理した上で、最新のベストプラクティス(最も効果的とされる手法)に基づいた対策を実行することが想定されています。

現時点では★3と★4の基準が中心ですが、自社の事業計画に合わせて、将来的にどのレベルまで到達すべきかを見据えておくことが大切です。

評価を受けるための具体的な手順と体制の違い

比べる観点:★3における自己評価と専門家の関わり方、★4における第三者評価と技術検証の仕組み、評価を支える専門家と機関の役割分担
図2:評価を受けるための具体的な手順と体制の違い

★3における自己評価と専門家の関わり方

★3の取得プロセスは、基本的には「自己評価」が中心となります。取得を希望する組織が、定められた要求事項に沿って自社の状況を記入していきます。この際、社内外のセキュリティ専門家から助言を受けることが認められており、専門家の力を借りて評価の精度を高めることができます。

具体的な流れとしては、まず取得希望組織が要求事項に基づき自己評価を記入し、その後、セキュリティ専門家がその内容を確認します。専門家は、記入内容を確認するとともに、必要に応じて評価結果の修正を含む助言を行い、最終的に事務局へ提出する内容に関して了承した場合に署名を実施します。

取得希望組織は、経営層による自己適合宣誓を含め、事務局に評価結果を提出することで、登録が行われます。

★4における第三者評価と技術検証の仕組み

★4では、自己評価だけでは完結せず、客観的な「第三者評価」と「技術検証」が必要になります。これは、自社が「できています」と言った内容が、本当に正しく機能しているかを、外部の専門機関が厳しくチェックする仕組みです。評価は、指定された評価機関が行い、技術的な検証は技術検証事業者が担当します。

プロセスとしては、まず自社で自己評価を行った後、評価機関に対して検証・評価を依頼します。評価機関は、提出された書類の確認だけでなく、必要に応じて実地での審査や、実際にシステムが正しく動いているかを確認する技術的な検証を実施します。

その結果に基づいた評価報告書を受け取り、問題がなければ事務局へ登録を申請するという流れになります。★3に比べて、より厳格で客観的な証明が求められるプロセスです。

評価を支える専門家と機関の役割分担

この制度には、多くの専門的な役割が存在します。★3のプロセスを支えるのは、セキュリティ専門家です。彼らは、取得希望組織の評価結果を確認し、助言を行う役割を担います。一方、★4では、さらに組織的な役割が必要になります。評価機関は審査全体を統括し、技術検証事業者は、より技術的な側面からの検証を専門に行います。

これら専門家や機関は、一定の要件を満たし、事務局に登録されている必要があります。例えば、セキュリティ専門家になるには、情報処理安全確保支援士などの特定の資格を保持していることや、所定の研修を受けていることなどが求められます。

自社が支援を依頼したり、評価を依頼したりする際には、相手が制度に基づいた適切な要件を満たし、事務局に登録されているかを確認することが、スムーズな手続きのために重要です。

自社がどちらを目指すべきか判断するための基準

比べる観点:取引先からの要求と契約条件を確認する、自社の業務がサプライチェーンに与える影響度を考える、準備に必要なリソースとコストのバランスを検討する
図3:自社がどちらを目指すべきか判断するための基準

取引先からの要求と契約条件を確認する

最も明確な判断基準は、現在進行中、あるいは今後予定している取引先からの要請です。大手企業や重要なインフラを支える企業と取引がある場合、サプライチェーン全体の安全性を高める目的で、SCS評価の取得を条件として提示されるケースが想定されます。

担当者の方は、まず取引先との契約書や、セキュリティに関するガイドラインを確認してください。もし「SCS評価の★4取得」と具体的に指定されている場合は、迷わず★4の準備を進める必要があります。逆に、具体的な指定がない場合は、取引先がどの程度のセキュリティ水準を自社に求めているのか、事前にヒアリングを行うことが、無駄な投資を防ぐための有効な手段となります。

自社の業務がサプライチェーンに与える影響度を考える

取引先からの直接的な指定がない場合でも、自社の役割から判断することが可能です。自社が扱っている情報や、提供しているサービスが、万が一停止したり流出したりした場合に、取引先やその先にいるエンドユーザーにどのような影響を与えるかを想像してみてください。

例えば、単なる部品の供給であっても、その部品の設計図が流出することで製品全体の設計が脅かされる場合や、自社のシステムが停止することで取引先の製造ラインが止まってしまうような場合、自社はサプライチェーンにおける「重要拠点」といえます。

このような立場にある企業は、★4の水準で求められる「被害拡大防止」の対策を講じていることを示すことが、ビジネス上の信頼につながります。

準備に必要なリソースとコストのバランスを検討する

最後に、自社の体制(人・モノ・金)を考慮する必要があります。★3は、専門家の助言を得ながら自社主導で進めるため、比較的コントロールしやすい範囲で準備が可能です。一方、★4は、外部の評価機関による審査や技術検証の費用が発生し、実地審査への対応など、現場の工数も大きくなる傾向があります。

「まずは★3を取得して、自社のセキュリティ体制を整え、その実績を元に★4へステップアップする」という計画も現実的な選択肢の一つです。いきなり高いハードルに挑んで業務が停滞するよりも、自社の成長段階や予算、そして何より「今、何が求められているか」という優先順位に基づいて、無理のないロードマップを描くことが重要です。

準備を開始するための具体的なアクション

確認する3つの視点:現状のセキュリティ対策を棚卸しする、専門家への相談タイミングを見極める、経営層への報告と意思決定の依頼
図4:準備を開始するための具体的なアクション

現状のセキュリティ対策を棚卸しする

どちらの星を目指すにしても、まずは自社の現在の対策がどうなっているかを整理することから始まります。これは、新しい仕組みを導入する前に、今あるものを把握する作業です。具体的には、社内のセキュリティ規定、ネットワークの構成図、データの管理ルール、従業員への教育状況などをリストアップしてください。

この棚卸しを行う際は、IT担当者だけでなく、実際にデータを取り扱っている現場の責任者にも協力を仰ぐことが大切です。書類上はルールがあっても、現場では守られていない、といった「実態との乖離」を見つけることが、評価において重要なポイントとなります。この整理された資料は、★3の自己評価や、★4の評価機関への説明資料としても活用することになります。

専門家への相談タイミングを見極める

SCS評価制度では、★3において専門家の助言を受けることが認められています。この専門家への相談は、評価の書き始めから行うのが効率的です。自分たちだけで評価シートを埋めてしまい、後から「この書き方では不十分だ」と指摘されると、大幅な修正作業が発生してしまうからです。

相談する際は、単に「どうすればいいですか」と聞くのではなく、「現在の当社の対策は、この要求事項に対してこのように考えていますが、適切でしょうか」という形で、自社の考えをぶつけてみるのが良い方法です。

また、★4を目指す場合は、評価機関とのやり取りが発生するため、より早い段階から、どのような技術検証が必要になるのかを専門家に確認しておくことで、予算やスケジュールの見通しが立てやすくなります。

経営層への報告と意思決定の依頼

SCS評価の取得は、単なるIT部門の作業ではなく、経営判断を伴う活動です。特に★3で求められる「経営層による自己適合宣誓」や、★4で求められる投資判断は、経営層の理解と協力が不可欠です。

評価の準備を進める前に、あらかじめ経営層に対して、なぜこの評価が必要なのか、取得することでどのようなビジネス上のメリット(信頼向上、取引継続など)があるのかを説明しておく必要があります。

報告の際には、単に「セキュリティの基準を満たします」と言うだけでなく、「取引先から求められている水準はこれくらいであり、これに対応することで受注の可能性が高まる(あるいは失注を防げる)」といった、事業継続の観点からの説明を心がけてください。これにより、必要な予算や人員の確保がスムーズになります。

参照情報・確認日

以下の公式情報を背景に、本文の手順・判断例はAX labsの提案として整理しています。料金や効果の保証は扱っていません。